土鍋だから、おいしくできる理由

土鍋は、寄せ鍋や湯豆腐など、鍋物専用と決めつけていませんか?でも、それは、とってももったいないこと。土鍋には、ここで紹介するように、金属製の鍋にはない、すばらしい調理特性があります。春になっても箱に入れてしまわずに、ふつうの鍋の一つとして、ふだんのおかず作りに使ってみてください。土鍋ならではのおいしさ、便利さを、きっと実感していただけると思います。

1.温度がゆっくり上がる土鍋は、素材のおいしさを引き出す

金属性の鍋と土鍋でお湯を沸かし、温度の上がり方を比べてみると、土鍋はゆっくり上昇していくことがわかります。
この性質が根菜類や米をおいしくする理由です。

1 根菜類の甘みが、さらに増す

ほっくり蒸したお芋は、甘さがおいしさの身上です。
根菜類や米が加熱によって甘くなるのは、でんぷんが酵素によって糖に分解されるため。
土鍋で調理すると、その酵素が働きやすい温度帯「40〜60℃」を時間をかけて通るため、より甘みが増します。

2 根菜類の煮くずれが起こりにくい

肉じゃがのように、ちょっと煮くずれているくらいがおいしい料理もありますが、おでんやポトフなどでは、野菜のきれいな形をくずさないで仕上げたいものです。
根菜類は煮はじめにゆっくり加熱されることで、表面の組織の強度が増すだけでなく、均一に火が入るため、その後グツグツ煮込んでも煮 くずれが起こりにくくなります。

2.いったん温度が上がると下がりにくい土鍋は、弱火調理でOK!

1 素材の外側と中心で加熱ムラができにくい

土でできている土鍋は、金属製の鍋に比べて熱伝導率が悪いため温度がなかなか上がりませんが、いったん上がったら、冷めにくいのが特徴です。
土鍋で調理するときは、いったん強火で沸騰させたら、あとは弱火に切り替えましょう。

3.保温性に優れた土鍋は、余熱調理が得意!

土鍋は、火を止めても高温が持続します。
この温度は素材に火を入れたり、味を含ませるのに好都合な温度。
これを上手に利用できるかどうかが土鍋使いのカギです。

1 根菜と肉類が、余熱でやわらかくなる

根菜類は90℃以上、肉類は75℃以上がやわらかくなりやすい温度帯です。
いったん温度が上がると冷めにくい土鍋では、火を止めた後も、その温度を長い時間キープできます。やわらかい火あたりが、根菜と肉類をじんわりやわらかくします。

2 余熱で素材に味がしみ込む

煮物の美味しさは、具にしっかりと味がなじんでいること。煮物は、煮た後に味がしみ込みはじめますが、このとき、温度が高いほうが味はしみ込みやすいといわれています。
温度が下がりにくい土鍋なら、火を止めた後でも、余熱で味がよくしみ込みます。また、次の簡単なひと工夫で余熱調理がパワーアップ。
火を消す直前に強火にし、ふたまであつあつにして火を止めます。その後土鍋を新聞紙と古いタオルにくるんでください。保温効果が高まり、さらにおいしく仕上がります。

4.土鍋は火のあたりがやわらかく、温度ムラが少ないためふっくらと甘いご飯が炊ける

温度が急に上がりにくい土鍋は、1.で説明したよ うに米の甘みが増します。
また、金属製の鍋とは違って火あたりがやさしく、鍋全体を包み込むように温めるため、火があたっている部分とそうでない部分の温度差が少なく、炊きムラができません。

土鍋ご飯の基本の炊き方

鍋物用土鍋を使って家庭用ガスコンロで炊くときの、基本的な炊き方をご紹介します。 火力調節は1回だけのシンプルな方法です。
米の量は、多くても少なくてもおいしく炊けません。 おすすめは3合です。

*土鍋の厚さや形によって加熱時間や火加減が変わるため、ご飯炊き専用の土鍋をお使いになる場合は、説明書に従って炊いてください。

材料

5〜6人分

米 … 3合
水 … 540ml

作り方

1 米を洗う・水につける

米は洗ってざるに上げ、軽く水けをきってから土鍋に入れ、分量の水を加えて30分以上つける。

※水の分量540mlは、米と同じ体積です。
米は洗っている間に水を吸うので、炊くときに加える水の分量は米と同じ体積でOK!ただし、洗った米を一度ざるに上げて水けをきることを忘れないで。

2 米を炊く

(1)の土鍋にふたをして中火にかけ、10分かけて沸騰させ、沸騰したら弱火にして20分加熱し、火を止めて10分蒸らす。

※火力を中火〜強火にして何回か炊いてみて、10分で沸騰する火加減を見つけてください。蒸気が出るのを確認し、きちんと沸騰させるのが おいしく炊くコツです。
※レシピに特に水やだし汁の分量についてことわりがない場合は、すべて540mlての水でOK。 記載がある場合はレシピに従ってください。水につける時間は、夏場は30分、冬場は1時間が目安です。

土鍋のある生活を楽しむために

土鍋は、大小そろえておくと料理の幅が広がる

土鍋は、蒸す・煮る・炊く・ゆでるができる万能鍋。だからどんなおかず作りもできます。大きさの違うものを2種類そろえておくと、ちょっとした常備菜などを作るときにも重宝します。

土鍋ご飯ファンが増え、最近ではいろいろなタイプのご飯炊き専用の土鍋が出回っています。それぞれに特徴があって、お気に入りを見つけて楽しんでいらっしゃる方も多いようですが、ご飯は鍋物専用の土鍋でもおいしく炊くことができます。

土鍋を長持ちさせるための上手な使い方

その1.はじめて使うときはおかゆを炊く

土でできた土鍋には細かいすき間があります。使いはじめにおかゆを炊くのは、このすき間を埋めてひび割れや、におい移りを防ぐため。土鍋に水を八分目まで入れ、米一つかみを加えて弱火にかけ、おかゆになるまで煮ます。そのまま冷まして水洗いし乾燥させたら、準備OKです。

その2.鍋底がぬれたまま火にかけない

鍋底には釉薬がかかっていないため、ぬれたまま火にかけるとひび割れの原因になります。必ずふきんで水けをふき取ってください。

その3.カビを防ぐには、よく乾かすこと

乾いているように見えても、細かいすき間に水分が残っています。水けが残っているとカビの原因に。風通しのよい場所でしっかり乾燥させましょう。

その4.急激な温度変化は避ける

加熱直後の熱いままの土鍋を水につけると、これもまたひび割れの原因になります。手でさわれるくらいに冷ましてから洗いましょう。

その5.焦げはゴシゴシこすらない

ちょっとした焦げなら水かぬるま湯をはってふやかしてから洗いましょう。ひどく焦げついてしまったときは、水を入れて一度沸騰させると取れやすくなります。

その6.におい移りが気になる時は茶殻で洗う

土鍋に水を八分目まで入れて沸騰させ、茶殻を入れて弱火で数分煮ます。その後、きれいに水洗いをして、しっかり乾燥させてください。

その7.ひびが入ってしまったらおかゆを炊く

使っていると、知らないうちに細かいひびが入るときがあります。そういうときは、使いはじめのときと同じようにおかゆを炊いてください。

出典:小西雅子・東京ガス「食」情報センター、『春夏秋冬 土鍋でごはん』、講談社、2009年、4-7ページ。