日本版「味覚の一週間」

室田洋子先生監修の子どもの発達段階を考慮した未来の食育指導者向け特別授業

室田洋子先生監修の子どもの発達段階を考慮した未来の食育指導者向け特別授業調理実習を取り入れた食育活動が盛んに行われていますが、発達心理・臨床心理がご専門の室田洋子先生(聖徳大学児童学部前教授)は、「調理実習を行う際には、子どもたちの発達段階の視点を取り入れることが大切です」とおっしゃいます。そこで、昨年度に引き続き、室田先生による発達段階を考慮した食育をテーマに特別授業を開催しました。今年度は、今後の食育活動に役立てていただけるよう、対象を食や栄養学を学ぶ学生と食育指導者の方々に限定。当日は、大学、短期大学、専門学校で食物学・栄養学を学ぶ女子学生24名がご参加くださいました。
授業は、小学生のための調理実習のモデル授業の見学と講演の2部構成で行いました。


調理実習のモデル授業の見学

モデル授業に参加した小学生は、小学2年から6年生の男女12名でした。実習メニューは、「肉じゃが」「カレーライス」「ミネストローネ」です。
昨年度の3歳児を対象にした調理実習では作業の質が問われましたが、小学生の調理実習では、食への好奇心やわくわく感を刺激し、実際に役立つような内容であることが重要とのことから、上記のメニューに決めました。3つのメニューは、いずれも材料は「じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、肉」で、味付けだけが異なります。このような同一の材料からまったく違った料理ができることを体験することで、子どもたちは食材がいろいろな料理に応用できることや工夫することを自然に学ぶことができます。
3つのグループに分かれ、グループごとに1品ずつ担当し調理を開始。途中、ほかのグループから漂ってくる香りに引き寄せられながらも各グループとも料理を完成させ、最後は全員で3つの料理を試食しました。
実習中、室田先生は、「左手でお鍋を持てば1人でできるね」「○○ちゃんは何を切りたい?」「じゃがいもは力を入れて皮をむくとおいしいところがなくなっちゃうよ」といったように、子どもたちの自立を促し、全員が作業に参加できるように、また、食材を大切にすることに気づくように、1人1人の名前を呼んで声がけをしていらっしゃいました。
学生たちは、室田先生の子どもたちへの接し方や言葉の選び方などをメモにを取りながら熱心に観察していました。


実習


講演

講演タイトルは「セルフエスティームと食」。冒頭、室田先生は「発達心理学、臨床心理学と食とは、実は深い関わりがあります」と語りかけられました。
その一つが家庭の食卓とのこと。「食卓は“食事をする場所”なのか“食事をさせる場所”なのかが大事です。“しっかり食べなさい”“ばっかり食べはいけません”・・・・といったように、管理している“食事をさせる食卓”では、子どもたちのセルフエスティーム(自己肯定感、自己価値感)が下がってしまいます。食卓は子どもへのまなざし、言葉など、人間の関わりの質が問われる場です。“おいしかった”“よかった”が続く食卓であることを大切にしてください」と、室田先生。

 

セルフエスティームと調理との関わりについては、年齢ごとにそれぞれの発達状況とそれにふさわしい調理内容を具体的に示しながらご説明くださいました。今回の小学生を対象にした調理実習については「小学生は、日常生活に必要な基本的な調理はできる年齢です。したがって、細かい調理技術というよりも同じ材料でも3つの料理になるというような、子どもたちが挑戦したくなる実践的な内容にすることが大事です。3種類の料理ができるということで自信がつき、家庭で作ってみようという意欲がわきます。そして、家族のために作り、家族からおいしかった、作ってくれて助かったとほめてもらえる。そのことが子どもたちのセルフエスティームには重要なのです」と室田先生。

 

参加者からは「食と子どもたちの心の成長がこんなに関わっているとは思わなかった」「実習中、室田先生は1人1人に笑顔で話しかけ、否定はしないで、ほめていらしたのが印象的だった」「手伝うのではなく、子どもたちが次の作業にとりかかるよう上手に促していらしたのが参考になった」といった感想が聞かれました。