東京ガス食育クラブ

環境に優しい食育協議会シンポジウムを開催しました

食育講座風景東京ガスと環境に優しい食育協議会は、8月3日、丸ビルホールにて、環境省・農林水産省・文部科学省にご後援いただき、シンポジウムを開催しました。
テーマは「豊かな地球を、未来につなぐために」。
2013年12月に和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、食文化継承への関心が高まっています。
しかし、豊かな食生活は、食料生産の土台となる地球が健全でなければなりません。
今年度は「エコ・クッキング」がスタートして20周年を迎える記念の年。
そこで、環境をはじめ様々な視点から、食を取り巻く問題について論じていただきました。



第1部 基調講演

「日仏、二つの無形文化遺産・食」

無形文化遺産、日本とフランスの料理の特色と課題についてお話しいただきました。


磯村尚徳氏日仏メディア交流協会会長
講義風景


無形文化遺産は形がないもの  卓越性は認められていない

法隆寺などの世界文化遺産と混同されがちですが、無形文化遺産は形のあるものや、お寿司のようなグローバルなものは該当しません。ユネスコでは、家庭や地域、国など、特定のコミュニティの「Way of life(生活習慣)」「Way of thinking(ものの考え方)を包括して文化と定義しています。ですから、グローバルなものは文明であって文化遺産ではありません。
また、無形文化遺産は卓越性が認められていないので、「和食は中国料理よりも上だよ」といった発言は、ユネスコの違反になってしまいます。

 


フランス料理は乳の文化  和食は水の料理

フランス料理の確固たる地位を築いたのはルイ14世でしょう。ルイ14世は牛や鶏の飼育、野菜の栽培を始めました。また、当時の料理人によってミルクを主体としたフランスの美食の基本ができました。ですから、レストランへ行ったときに、ワインは飲まなくても乳製品の粋であるチーズをスキップするようではいけません。また、前菜から始まる食の流れも特色の一つです。レストランだけでなく、家庭でも学生食堂でも、一定の秩序があります。
フランス料理がミルクの文化なら和食は水の料理といえるでしょう。豊かな水を使ってゆでる、煮る、蒸すなどの調理法が発達しました。
和食は国際的にヘルシーな料理として通っていて、OECD加盟国の中で最も肥満率が低いのは日本です。長命の点では1位が日本、2位がフランス、3位がイタリアです。乱暴ないい方をお許しいただけるならば、美食をしていればスリムになって長生きをする、といえるのではないでしょうか。

 


食文化伝承のために始まった味覚教育

フランスは美食を守ることを国家戦略として取り組んでいます。守るというのを“ディフェンシブ”な考え方ではなく、むしろルネッサンスとしてとらえています。ワインなどに与えられるAOC(原産地呼称統制)はご存知の方が多いと思いますが、最近レストランを規制する「フェメゾン」という制度ができました。これは自家製であることを示す認証で、インスタントや冷凍食品を出す店はレストランとして認めないというものです。
そして、もう一つ、食べ手側を育てることを目的に始まったのが「味覚の一週間」です。フランスでは今年で26年目になります。私も呼びかけ人になって日本でも5年前から始まりました。今年度のテーマは「地球にやさしく食べよう」です。食品ロスや飢餓といった問題が深刻化しています。これからは環境の視点も必要になってくるでしょう。



第2部 対談

「食と地球、その循環を考える」

食を取り巻く問題や意識を行動につなげるための解決策、今、大切なことについて語り合っていただきました。


服部幸應氏(対談者)学校法人 服部学園 理事長
 
講義風景

枝廣淳子氏(対談者)幸せ経済社会研究所所長
東京都市大学 教授
講義風景


工藤裕子(コーディネーター)東京ガス「食」情報センター 所長
講義風景



持続可能な食料生産のために

枝廣 食料の需要の面では、人口増加による食料不足に加えて、人間と自動車による食べ物の奪い合いが起きています。一方、供給の面では、世界中で農地は減り、施肥しても収穫量はこれまでのようには増えないというのが現状です。さらに日本については、食料自給率の低下、農業従事者の減少という問題もあります。
服部 日本の農業従事者は250万人です。毎年20万人がリタイアし6万人が入ってきていますが、このままでは、あと15〜16年で従事者はいなくなってしまいます。デンマークのレストラン「ノマ」のシェフが「日本は狭い土地に大勢の人が関わっているから、きめ細やかな農業ができる」といっていました。そういう一面もありますが、農業問題に対して、もっと危機意識をもたなければなりません。
枝廣 農業という「作る力」に加えて、「作る」と「食べる」をつなぐ力も必要です。その一例が直売所です。アメリカでは直売所が進化したような形の「CSA (Community Supported Agriculture)地域で支える農業のシステム」が増えています。「食べる」と「作る」をつなぐことで、両方を強めていけるような循環が広がっていくといいなと思います。

行動変容には必要なこととは?

枝廣 省エネや節電など、自分にも経済的にもプラスの場合はいいのですが、応援するため、正しいことをするためにお財布を開くかというと、そこはハードルが高い。「ねばならない」では人は動きません。その行動が自分のメリットになるとか、かっこいいという形にもっていくマーケティングの手法が必要です。アメリカに「ロカボア」という、100マイル以内のものを食べようという動きがありますが、若い人を中心におしゃれでかっこいい!と広がっていきました。
服部 スローフードを立ち上げたカルロ・ペトリーニさんが「ゼロキロメートル運動」を推し進めていらっしゃいます。地元でとれたものを食べるという運動です。スローフードの会員は世界中にいますが、日本でも、そういうメッセージを発信できる人が、いろいろなところに出てきてほしいと思います。

「レジリエンス」と「オキシトシン」

枝廣 私たちは、温暖化や食料問題など、これまで通りにいかなくなるかもしれない時代に生きています。そこで「レジリエンス」という言葉をお伝えしたい。何かあったときに折れないで立ち直る力のことで、「しなやかな強さ」と訳しています。たとえば、「輸入品のほうが安いから」ではなく、食料輸入がストップしたときに備えて地元に農家の知り合いを作っておく、ベランダ菜園をするという自衛策もその一つです。
心のレジリエンスも必要です。折れない心を育てるために大切なものの一つが、母親などまわりの人にしっかり受けとめられているという感覚です。目の前の仕事も大事でしょうけど、子どもの人生にとって本当に大事なものは何か、立ち止まって考え、優先順位を変えていくことも必要ではないでしょうか。
服部 母親との関係の話が出ましたが、授乳が母子の絆を強くすることがわかりました。授乳中に母親の脳下垂体から「オキシトシン」というホルモンが出ます。これが出て母性本能にスイッチが入るそうです。そして、オキシトシンが母乳を通して赤ちゃんに入ると赤ちゃんもお母さんを好きになるというわけです。
スポーツも音楽も刷り込みの時期が大切ですが、親子関係を深める絶好の刷り込みの機会が授乳です。
記事は基調講演、対談の内容を一部抜粋してまとめたものです。
講義風景対談終了後、東京ガス「食」情報センターの杉山智美より、ミラノ国際博覧会の視察を通して見えてくるこれからの食育のあり方について情報提供をさせていただきました。