東京ガス食育クラブ

「環境に優しい食育協議会」シンポジウムを開催しました

食育講座風景東京ガスと環境に優しい食育協議会は、8月1日、丸ビルホールにて、農林水産省・環境省・文部科学省にご後援いただき、シンポジウムを開催しました。
テーマは「多様な食育を考える」。
食育のかたちはますます多様化し、食育の場は広がりを見せています。今回のシンポジウムでは、食育の原点ともいわれている共食、食育の中心をなす学校と家庭の食育をテーマに取り上げました。



ごあいさつ

服部幸應氏(環境に優しい食育協議会 委員長)


食育講座風景東京ガスの食育は約25年になり、2014年からは当協議会を発足し、環境に優しい食育に取り組んでいます。環境の視点で食を考えたとき、重要なのが食料自給率39%でありながら年間673万トンもの食品ロスを出しているという問題です。一方で、東京五輪ではオーガニック食材の調達が求められています。しかし、農業従事者は高齢化と減少が進み、有機食材の生産高はわずか0.27%というのが日本の農産物の現状です。こうした問題解決に向け食育の果たす役割は大きく、力を出し合うことが必要ではないでしょうか。


第1部 基調講演

講師 足立己幸氏(女子栄養大学 名誉教授)・(名古屋学芸大学 名誉教授)


「共に『食べる』から、共に『食』をつくる共食へ」

食育講座風景40年にわたり共食・孤食の研究や活動を行っている足立己幸氏から多様な共食の現状やとらえ方についてのお話をいただきました。


社会の変化とともに変えてきた共食の定義

共食をテーマに研究や活動を行っているなかで、子どもたちに食事の絵を描いてもらっています。最近の絵の中にも、同じテーブルに座りながら子どもは一人で食事をし、おかあさんはパソコンや携帯電話をチェックしているというものが多くなりました。どちらも見かけは共食の形をとっています。しかし、これを共食と呼べるでしょうか? 現代では、味わって食べるという行動を共有しない共食が増えてきています。
共食の定義を、この40年間で緩やかに変えてきました。最初は「家族と一緒に食事を食べる」でしたが、ライフスタイルや家族構成の変化から「誰かと一緒に食べる」と緩やかにしました。現在では「食行動を共にする」と行動面も緩やかな定義にしています。食行動は大まかに「食べる」「食事を作る・準備をする」「食に関する情報を交換し、食生活を営む力を形成する」に分けることができます。これらは相互関係が深く、ひとつの行動を共有すると、他の行動を共有する可能性が高くなることが、調査の分析結果からわかっています。
共食の3つの定義をみたときに、誰もが関われるという点で家族と一緒に食事を食べることがシンボルのようになっています。しかし、いわゆる「貧困の連鎖」が社会的な問題となり、家族との食事が難しい子どもたちもいます。日本中で同じ定義や目標を決めてしまわなくても、話し合いの中で、自分たちの暮らしや地域に合った共食のかたちを見つけていけばいいのではないでしょうか。

 


共食が生み出すよい循環 孤食が招く悲しい連鎖

第3次食育推進基本計画で15項目の行動目標が出されました。その中に共食関連のことが2つ含まれています。なぜ共食がそこまで問われるのでしょう? それは、共食が一緒に食べたか食べないかの問題にとどまらないからです。食は食べ物、体や健康、心、人間関係、暮らし方、地域や環境とつながっていて、それらは連鎖しています。共食の場合では良好な連鎖が生まれますが、孤食の場合では、たとえば食事内容がよくない、健康に問題、コミュニケーションがうまくとれないなど、負の連鎖を招きやすくなります。しかし、循環しているということは、視点を変えれば、どこかが変われば方向が転換する可能性があるということ。私たちは毎日3回食事をしています。その食事の回数だけ、負の連鎖を断ち切るチャンスがあるわけです。どのように転換していったらいいかというところに食育の課題があると思います。

 


食事のイメージが描ける感性を育てることが大切

作る行動について考えてみましょう。作る行動は、何を作ろうかと考えることと、実際に食事として食べられる状態にすることの2つに分けられます。両者では作業の質が違います。前者の食べる人のことを考えて食事を仕立てるためには、食事のイメージを持っていないとできません。今は、食事のイメージが描けない子どもたちが増えています。理想の食事は?と聞かれても答えられないのです。今、必要なことは、共食とつなげて、自分や家族や暮らしや地域に合った食事をイメージできる感性や考え方を育てることです。答えを教えることが食育ではありません、答え探しが上手になるよう後押しをすることが大切です。



第2部 パネルディスカッション

「学校の食育、家庭の食育」

食育基本法が制定されて11年目、食育は第3期に入りました。
そこで、食育の中心となる学校と家庭における食育について論じていただきました。


足立己幸氏女子栄養大学 名誉教授
名古屋学芸大学 名誉教授
講義風景

曽我部多美氏東村山市立回田小学校 校長
全国小学校家庭科教育研究会 会長
講義風景


柳原尚之氏近茶流 嗣家
柳原料理教室 副主宰
講義風景

工藤裕子東京ガス「食」情報センター 所長
 
講義風景



給食とおせち料理は優れた共食の場

工藤 様々なところで取り組まれている食育ですが、中心となるのは学校と家庭です。曽我部先生、柳原先生の食育の取り組みをご紹介ください。
曽我部 小学校では1〜4年生までの食育を、5,6年生で学ぶ家庭料理で総合的にまとめ、家庭での実践へとつなげていきます。給食は共食の場であり大切な食育の場です。和食や世界の料理、東村山市の郷土料理など、幅広い食の経験ができるよう工夫しているほか、自分で食べる量を考える「バイキング給食」、高齢者や海外の高校生との「交流給食」といった取り組みも行っています。食料廃棄の問題から残菜を減らす試みも実施しています。給食を家庭で作ったり親子で話し合ったりするための本も作りました。
柳原 家庭の食育という観点でいうと、味覚は育てるものなので小さいときから様々な食体験をさせることが必要だと感じています。特に香りで感じる味には経験が必要です。私は和食が専門ですが、日本料理は水と醸造調味料でできているという特徴に加え、「食べることに願いを込める」という特徴があります。願いを込める食で大切なのが年中行事です。「お食べ初め」、「五節句」などいろいろありますが、最も大事で今も家庭に残っているのが「おせち料理」ではないでしょうか。節目の行事を大切にすることで、旬やその土地の料理を伝えることができます。
足立 おせちは質の高い共食の場を作る可能性があります。お正月はいつもとは年齢、健康、食事への思いが異なる人が集まるので、会話しあう情報の内容や、食事作りの協力・分担も異なってきます。また、曽我部先生のお話にあったように、学校に地域のお年寄りを招いての給食は、食や生活の知恵などを教えてもらえ、とてもいい共食の場であると思いました。

個性を発揮して多様に展開すべき第3期の食育

工藤 柳原先生、家庭の食事の特徴はいかがでしょう?
柳原 家庭では、老人や病人、赤ちゃんなど、食べる人に合わせて味付けを調整します。あらかじめ仕込んでおくことの多い料理屋にはない出来たてを味わえるのも家庭ならではです。食本来の味をいちばん身近に感じられるのが家庭だと思うので、そこは大切にしていきたいですね。
足立 ただ、全国で食育を行っている中で、家庭の食事の改善だけでは難しいところがあります。たとえばコンビニの方たちも加わり、食環境づくりに力を入れた食育が進んできていますが、それも必要ではないでしょうか。
曽我部 学校の給食は外で提供されるもので家庭の食とは少し違いますが、できるだけ、本物の味に近づけたいと努力しています。そういう点ではお店と共通するでしょうか。
足立 私は家庭での共食がいちばんよくて、他がそれを補完する関係ではなく、家庭・学校給食・外食店等がバランスよく組み合わさることが大事だと思います。たとえば学校給食は教育の一環として行われ同年齢の子どもたちが一緒に食事をする特徴があり、違う世代の人と共食する家庭では、一生のイメージを持ちながら食べる共食のよさがあります。
柳原 それぞれの個性を発揮することは大事だと思いますが、家庭や学校、外食店が子どもたちの健康や豊かな生活を目ざして情報を共有し、同じ方向に向かえないものでしょうか?
足立 そのためには、地域全体を俯瞰して食のあり方を考え、どんな食育をどんなアプローチで、どう役割分担して行うのかを話し合う必要があります。よちよち歩きの1期、ルールができた2期を経て、食育は今、個性を発揮して多様に展開すべき第3期に入りました。地域の特徴、人々の個性、皆さんには、個性を存分に発揮しあい頑張っていただきたいと思います。
工藤 得意分野を活かし、連携して食育に取り組むことですね。
記事は基調講演、パネルディスカッションの内容を一部抜粋してまとめたものです。
講義風景東京ガスからの情報提供
〜デジタル教材の作成について〜

現在作成中のデジタル教材について、東京ガス「食」情報センターの杉山智美より情報提供させていただきました。
デジタル教材は学校用の副教材「食と環境のワークブック」をベースにしたもので、小学校の授業での使用を想定しています。デジタル教材の概要について説明した後、10分にまとめた縮小版をご視聴いただき、内容や配布方法についてアンケートを行いました。